読みもの

ノベルティ をコミュニケーションツールへ変えたマクロミルの法人ギフトをふりかえりました。

Date:2021.03.19 
Category: インタビュー

③ 心に刺さる“モノづくり”をしよう

 

ミウラ:前述のように、アナログコミュニケーションやブランディングの意義を理解してもらうことが、社内で継続していくコツという話もありました。ここで、モノづくりをする上で意識されていたこともお聞きしたいと思います。大石さんは長年携わっていらっしゃったので、一家言あると思いますが!

 

対談中のマクロミル大石さん(男性)下瀬さん(女性)三浦

 

大石:どう継続していくかはいろいろと悩みました。最初は指標として「2割の人に刺さればいい」ということを意識していましたね。先ほどお伝えしたように、8割の意見を聞いてみんなが喜ぶものを目指すそうとすると、どんどんエッジが削がれて、記憶に残りづらいアイテムになっていってしまいます。

 

ミウラ:はい、良いところを全部詰め込んだ「幕の内弁当」が果たして印象に残るのか?という例えを出して会話していた記憶があります。

 

大石:一方で、矛盾するのですが…(笑)、ブランディング重視で「記憶に刻まれる」ことをプライオリティーでやっていくと、前年との比較対象として見られてしまうんですよ。「昨年のほうが良かった」とか言われてしまったり。こうした企画モノを続けることの宿命ではあるのですが、でもそこを超え続けることを目指すのって、ある種の自己満足というか、それは本質ではないなと。であればと、もらった時の嬉しさや実用性も重視する方向に切り替えたりもしました。長い期間取り組んだからこそ、行ったり来たりのバランスを取れたのかもしれません。

 

会話中の大石さん

 

下瀬もらって嬉しかったという反応が多かったアイテムの代表は「年越しそば」だったかもしれません。あえて前倒して年末に配り、年末年始にマクロミルのことを思い出していただきたいということも狙った企画で、セールスパーソンにも好評でした。お客様にも喜んでいただけて、ニーズを汲めた企画だったのかもしれませんね。社内報のアンケートでは歴代人気ノベルティとしてNo.1になった実績もあります。

 

センスのいいパッケージの年越しそばのノベルティ

コンセプトは、どこよりも早い年越しそば。通常年始に届けるところを、年末に届けることで、顧客の年越しそばニーズを先取りした。社内報「ミルコミ」のアンケートでも人気アイテム。

 

ミウラ:なるほど。このタオルも実用性があるアイテムでしたね。こちらもオーダーを受けたり提案したりしながら、大石さんの方向性には変化を感じてきました。長いレンジで見られていた証拠ですね。

 

触るとひんやりする素材を使用した、ビールの泡や色の色のデザインのハンドタオル

「触るとひんやりする素材」を使ったタオル。付録では小説家の羽田圭介さんに「インターネット調査」をご自身で体験していただきつつ、エッセイ風の文章を寄稿していただきました。

 

大石:このような幅を持たせた変化は、従来の名入れノベルティでは絶対無理ですよね。ブランド担当はステークホルダーから寄せられる様々な角度からのツッコミに対して、何のためにやるのか、何を目指すのか、だからコレなんだということをきっちり説明できないといけないと思います。おかげで屈しないメンタルが培われました(笑)。

 

ミウラ:改めて、この辺は事業会社の中の人のテクニックだなぁと思いました。飽きさせない工夫というか、例えるならアパレルのシーズン毎の新作発表みたいなものでしょうか(笑)。

 

下瀬そうですね、大石が毎年経営層や営業部長に対し、アイテム詳細や企画コンセプトを説明するプレゼンは社内でも恒例になっていました。

 

大石:あと、パッケージでCIやVI(ビジュアル・アイデンティティ)を表現することも意識しました。基本はマクロミルのコーポレートカラーであるブルーを出したかったんですが、途中からそこをあえて少し崩すことも大事にしてきました。

 

過去のノベルティを手に取る大石さん

 

ミウラ:ああ、確かに、年越しそばもタオルもコンセプト重視でしたね。宇宙食も。もちろんデザインもブルーを全面に出すものは提案しつつ、あえて外してきたと。

 

赤と金色でデザインされた宇宙食のノベルティ

あえてコーポレートカラーを立たせなかった、宇宙食

 

大石:CIやVIをしっかりデザインに取り入れたアイテムと、あえてそれに囚われないアイテムとのバランスは意識的に判断してきましたね。もう一つは開ける瞬間の仕掛けを、三浦さんと考えましたよね。
特に、お客様には発送でのお届けも多いので、セールスパーソンがいないところでオフィスのデスクに届くわけですよね。「これなんだろうな?」というワクワクした気持ちでパッケージを開けていただきたかったんです。

 

ミウラ:届いた後のプロセスと感覚を一緒に考えていただきましたね。例えば、手に持った際に軽すぎるとありがたみが薄くなるのではとか、ただ重過ぎると営業さんが持っていくのにクレームが出るのではとか(笑)。あとは開ける前から全貌が見えているパッケージの方がいいのか、どういう手順で中身を取り出すんだろう?とか。

 

大石:チープに感じられるような質感やデザインにはしたくなくて、セレクトショップなんかに置いてあってもおかしくないと思えるぐらいのレベルを目指してきたつもりです。その蓄積が開ける瞬間の期待値を決めるように思います。

 

ミウラ:デジタルではできないアナログの魅力って何だろう?と考えていたのですが、リアルなモノって、五感や想像力を使える幅が大きいんですよね。重さとか厚みとか手触りとかですよね。ギフトの話は、どうしてもアイテムの良い悪いという話に偏ってしまいがちですが…

 

対談中の三浦

 

ミウラ大事なのは、ユーザーの心にどうやって印象を刻み、忘れさせない体験をしてもらうか、だと考えています。そのためには、今の話のような一つの体験を深掘る想像力が必要ですね。オンリー性、シェア性、ガチャ性(コラム:企業ギフトをマーケティングの武器にするための3つの感性、など勝手に定義しているのですが、行動経済学に近いような話です。それを意識するきっかけになったのがこのマクロミルさんの仕事だったんだなあと改めて感じています。

 

下瀬そうですね、今までのアイテムはコミュニケーションとアクションが自然に起こるものだったように思います。宇宙食だったら、お客様が社内でシェアされて周囲の方におすそ分けされたり。ポンチョだったらアウトドアに持っていかれたり。

 

大石:体験を通じて心に残るギフトになっていたのなら嬉しいですね。マクロミルは対面に立つセールスパーソンやリサーチャーの社員がすごく魅力的なので、その人柄も一緒に届いていたら尚良いかなと。まさに、三浦さんが立ち上げた会社の手と手(tetote)に伝わるコミュニケーションが大事かなと思います。

 

和やかな雰囲気で対談する三浦、大石さん、下瀬さん

 

一同(笑)

 

ミウラ:うまくまとめていただき、ありがとうございます。

 

(次ページ、これからの企業コミュニケーションとは?)

 

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